骨形成機構の更なる理解と骨粗鬆症に代表される骨代謝疾患の病態解明のため、骨芽細胞の発現遺伝子の分析を通じて、骨芽細胞の新規機能の解明を行ってきた。その結果、幾つかの新規遺伝子を同定した。 まず最初の遺伝子は、マウスAEBP1(Adipocyte enhancer binding site binding protein 1)のヒトに対応する遺伝子である。AEBP1は、脂肪細胞の分化の研究で発見された遺伝子で、脂肪細胞の分化とともに発現が抑制され、脂肪細胞特異的遺伝子の発現抑制能を持つことから、脂肪細胞の分化抑制能を持つと考えられている。この遺伝子が、脂肪細胞と起源を同じくする骨芽細胞にも発現しており、脂肪細胞と同様に骨芽細胞の分化とともに抑制されることから骨芽細胞においても分化抑制能を持つものと考えられる。また、実際の骨形成の場でのAEBP1の発現をIn situ hybridizationでみてみると仮骨を旺盛に形成している骨芽細胞に強い発現を認めた。 次の遺伝子は、基底膜に存在する基質蛋白であるnidogenと塩基配列で55%、翻訳したアミノ酸配列で38%のidentityを認める骨基質蛋白質であり重要のmotif構造をもち、nidogenとの相同性より骨基質においてcollagenと他の気質蛋白質の橋渡し役をするもとのと考えられる。 ほかに非常にシステインに富む骨基質蛋白、甲状腺ホルモンに対する新規レセプターや全く未知の遺伝子が同定されている。今後はさらに新規遺伝子の同定を進めていくだけでなく、その機能解析も同時に行っていく予定である。
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