骨形成細胞(骨芽細胞)が分泌する末知タンパクの同定とその骨疾患での意義

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07407040
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 高岡 邦夫 信州大学, 医学部, 教授 (30112048)
• 研究分担者: 大久保 公策 大阪大学, 細胞工学センター, 助教授 (40233069) ; 清水 富永 信州大学, 医学部, 助手 (40283270)
• キーワード: 骨芽細胞 / 骨基質タンパク / 遺伝子

研究概要

研究実績の概要
骨形成機構の更なる理解と骨粗鬆症に代表される骨代謝疾患の病態解明のため、骨細胞の発現遺伝子の分析を通じて、骨芽細胞の新規機能の解明を行ってきた。今回は骨芽細胞のcell lineであるMC3T3-E1細胞の石灰化過程における遺伝子発現の解析と骨芽細胞にのみ発現している遺伝子(osteomodulin)の同定を行った。
MC3T3-E1細胞の基質合成期と石灰化期からmRNAを抽出した、3'-directed libraryを作成し、約10000 cloneのsequenceを解析した。これまで知られているほぼ全ての骨基質蛋白質の遺伝子が発現していることが明らかとなったが、さらにSC1 proteinやlink proteinなどのこれまで骨芽細胞が分泌していることの知られていない基質蛋白も発現されていた。この石灰化過程に発現している転写因子に注目すると、脂肪細胞や筋細胞への分化を調節しているものがみられたが、これらの転写因子は脂肪細胞や筋細胞への分化を抑制しているものだけでなく、分化を促進しているものも同時に発現していた。骨芽細胞は、脂肪細胞や筋細胞と同じ未分化間葉系細胞由来である以上に、その分化過程において分化を調節している転写因子を共有している可能性を示すものである。
osteomodulin (GeneBank Accession number,AB007848)は、骨芽細胞と海綿骨にのみ発現を認めるkeratan sulfate proteoglycanであり、骨におけるcollagen fiberのassemblyの調節を行っていると考えられる。この遺伝子は9番目染色体長腕21.3上に存在する約12kbpの3つのexonからなる遺伝子で、第1intron上に骨芽細胞にのみ発現するために重要な配列であるOSE2 sequenceを持つ。骨芽細胞にのみ発現し、collagen合成期に発現のピークを持つ遺伝子はこのosteomodulin以外ではなく、この発現遺伝子の解析は骨芽細胞の特殊な機能解析に重要であるものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Saitou,S., Takaoka,K.: "Peroneal osteocutaneous flap raised on reconstructed popliteal arten for delayed union following open tibial fractures." Microsurgery. 17. 230-237 (1997)
• [文献書誌] Nakase,T., Takaoka,K.: "Interleukin-1-beta enhances and tumor necrosis factor-alpha inhibits bone morphogenetic protein-2-induced alkaline phosphatase activity in MC3T3-E1 osteoblastic cells." Bone. 21. 17-21 (1997)
• [文献書誌] Yoshikawa,H., Takaoka,: "Bone morphogenetic proteins(BMP)in musculoskeletal oncology." Journal of Musculoskeletal Research. 1. 1-12 (1997)
• [文献書誌] Ebara,S., Kawasaki, Takaoka,K.: "Transcriptional reguration of the mBMP gene through an E-box in the 5'-franking promoter region involving of USF." Biochemical and Biophysical Research Communication.(in press) (1997)
• [文献書誌] Kobayashi,S., Takaoka,: "Factors affecting aseptic failure of fixation after primary Charnley total hip arthroplasty." The Journal of Bone and Joint Surgery. (in press) (1997)