(1)F344ラットの脛骨骨髄腔にラット骨肉腫培養細胞(MSK-8G)を注入して作製した骨肉腫肺転移モデルの治療実験を行った。術前化学療法としてMTXとADMを腹腔内に投与し、骨肉腫細胞を移植した患肢の切断時期が肺転移巣の増殖に及ぼす影響を分析した。結果は、患肢を一定期間切断せずにおくことが、肺転移巣の増殖抑制に関与しており、原発巣存在下での化学療法の有用性を示していた。 (2)我々は昨年、F344ラット骨肉腫(MSK-8G)に細胞接着分子B7-1cDNAを導入して作製した腫瘍細胞ワクチンが宿主のキラー細胞を誘導し、骨肉腫同所性移植モデルで治療効果を示すとの結果を得た。今回はB7familyに属するB7-1とB7-2cDNAをマウス骨肉腫細胞(LM8)に導入して、いずれが腫瘍ワクチンとして優れているかを検討した。B7-1とB7-2を発現したトランスフェクタントをC3H/Heマウスに皮下移植したが、両者の皮下腫瘍は低増殖性であり、肺転移数にも差はなかった。しかし生存日数はB7-2LM8で有意に延長していた。B7-2分子が、より優れた腫瘍ワクチンとなる可能性を示していた。 (3)細胞外マトリックス分解酵素MMP遺伝子のプロモーター領域には、ets蛋白の結合部位が存在する。我々はets群がん遺伝子familyの一員であるEIAFmRNAを発現させることによって、マウス線維肉腫の浸潤能が上昇することを明らかにした。今回は、EGFによりMMP-9とuPAが誘導されると同時に、浸潤能も上昇する乳癌細胞株(SK-BR-3)を用いて、MMP-9とuPAの活性化におけるets群がん遺伝子familyの役割を解析した。結果は、EIAF、ets1、ets2が、MMP-9とuPAの活性化と浸潤能の上昇に関与していた。つまり、骨肉腫を含めた肉腫の浸潤能には細胞外マトリックス分解酵素が関与しており、分解酵素の活性化にはets-family転写因子が重要な役割をはたしていることを示していた。
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