研究概要 |
1)Erb B receptor family(Erb B_<1,2>)は細胞膜表面に存在するチロシンキナーゼ受容体である。乳癌ではErb B_2の発現は予後不良因子である。しかし、骨肉腫におけるErb B receptor familyと予後との相関性は明らかでない。今回、化学療法と手術療法を施行したMoの骨肉腫の中から、治療前の原発巣生検組織が得られている28例の骨肉腫を検索した。パラフィン包埋組織切片から、Erb B_1,B_2の多クローン抗体を用いた免疫染色標本を作製した。Erb B_1は22例(78%)、B_2は17例(61%)に発現をみた。Overall survival rateではErb B_2非発現例は予後不良であり、予後予測因子になり得ることを示唆していた。2)我々は骨肉腫ではets-family転写因子が高発現しており、MMP-9とともに、腫瘍浸潤能に関与していることを明らかにした。今回は、腫瘍細胞の浸潤能にはets-family転写因子とMMP-9とがどのように関与しているかを分析した。腫瘍細胞としては乳癌細胞株(SK-BR-3)を用いた。EGFをSK-BR-3細胞に添加すると、マトリゲルインベージョンチェンバーでの浸潤能は8倍に上昇した。その際、MMP-9 promoter上にets結合部位が存在し、ets-1,-2によってMMP-9 promoter活性が誘導されることを明らかにした。3)活性化T細胞のAICD(activation induced cell death)抑制による骨肉腫免疫療法の可能性について検索した。正常ヒト末梢血からLAK細胞(lymphokine activated killer cell)を分離し、NAC処理(N-acetyl cysteine)することによって、LAK細胞にいかなる変化が表れるかを分析した。LAK細胞のグルタチオン濃度の上昇が、Fas依存型AICDを抑制し、このことがLAK細胞のTNF産生の増加をもたらしていた。つまりNACを投与してLAC細胞の延命をはかることによって、免疫療法による有効な抗腫瘍効果を期待できる可能性を示していた。
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