研究概要 |
本研究in vivoおよびin vitro両面から急性肺障害の発症機序を研究するものである。特に肺胞マクロファージを中心とした炎症性サイトカインのネットワーク、iNOSの変動等について新しい知見を得ることにより急性肺障害における単球系の役割を解明することを目的としている。初年度である平成7年度はin vivoの系でクロドロネート包括リポゾームを吸入させて肺胞マクロファージを根絶したラットモデルを用いて、緑膿菌生菌を静脈内投与(敗血症モデル)および経気管肺内投与(肺炎モデル)して肺胞マクロファージの有無による反応の相違について検討を加えた。この結果、ラットにおいては肺胞マクロファージの産生するMIP-2蛋白(人におけるIL-8ファミリー)が全身の多核白血球の肺への凝集に関与していることが示された。ラットにおいては塩酸による肺障害モデルにおいても同様に検討中である。さらに現在マウスを用いて同様のモデルを作り、iNOS,やTNFα,MIP2,CINCなどの炎症性サイトカインの肺における発現についても検討中である。また臨床面においても成人呼吸窮迫症候群を罹患した患者の肺洗浄液中の肺胞マクロファージ中のiNOS活性についても検討を加え急性期において高度に発現していることを示した。この現象は高度の侵襲を伴う食道癌根治術後の患者の肺胞マクロファージにおいても観察されたが、さほどの侵襲を伴わない手術患者においては発現はみられなかった。このことより臨床面においても肺胞マクロファージのiNOS発現が肺障害に強く関与している可能性が示された。 さらに遺伝子治療の応用については現在プラスミッド大量生産システムを確立中である。
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