研究概要 |
本研究は動物実験、臨床データ両面から急性肺障害の発症機序を研究するものである。特に肺胞マクロファージを中心とした炎症性サイトカインのネットワーク、iNOSの変動等について新しい知見を得ることにより急性肺障害における単球系の役割を解明することを目的としている。平成8年度はin vivoの系でクロドロネート包括リポゾームを吸入させて肺胞マクロファージを根絶したマウスモデルを開発した。このマウスを用いて緑膿菌生菌を左肺内投与する亜急性肺障害実験を行った。肺胞マクロファージ根絶マウスでは左肺は無処置マウス以上の強い障害を受けたにもかかわらず遠隔臓器である右肺では障害程度が少なかった。この右肺における変化を見当したところ無処置マウスではiNOS,やTNFα, MIP2, CINCなどの炎症性サイトカインなどの発現が著明であったのに比し、根絶マウスではこれらの蛋白発現が抑制されていた。臨床面においては成人呼吸窮迫症候群を罹患した患者の肺洗浄液中の肺胞マクロファージ中および血清中ののiNOS, IL-1b, TNFa, IL-6, IL-8活性について検討を加え、急性期において肺胞マクロファージ表面にこれらの蛋白が高度に発現していることを示した。さらにRT-PCRを用いて肺胞洗浄液のiNOS, IL-1b, TNFa, IL-6, IL-8などのmRNA発現を検討したところ、早期よりこれらのmRNAが発現し、かつテステロイド投与により強く発現が抑制されることが示された。
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