研究概要 |
本研究により肺胞マクロファージを中心とした炎症性サイトカインのネットワーク、iNOSの変動等について新しい知見を得ることができた。特にクロドロネート包括リポゾームを吸入させて肺胞マクロファージを根絶したラットそしてマウスモデルを開発できた。本法は95%以上の肺胞マクロファージを根絶でき、従来の気管支内直接投与法(70%程度の根絶)よりすぐれたモデルである。平成9年度はこのモデルマウスを用いて緑膿菌生菌を肺内投与する亜急性肺障害実験を行った。肺胞マクロファージ根絶マウスでは当初肺障害の程度も少なく、死亡率も低かったが7から10日前後にかけてほとんどのマウスが死亡した。それに対して無処置マウスは緑膿菌投与直後の死亡率が高かったにもかかわらず半数近いマウスが生存した。また根絶マウスでは腎等の遠隔臓器の障害程度が少なくiNOS,やTNFa, MIP2,CINCなどの炎症性サイトカインの発現が著明に抑制されていた。これらの所見は肺胞マクロファージが生菌の除去に必須であるが炎症初期の過剰反応が時に生体に不利な反応を引き起こす可能性を示唆している。これらの諸事実は一方ではARDSが全身炎症症候群の肺分画症であることの証左でもあり、その過程において肺胞マクロファージが重要な役割を果たしていることが判明した。臨床面においては急性呼吸窮迫症候群を罹患した患者の肺洗浄液中の肺胞マクロファージ中および血清中のiNOS, IL-1b, TNFa, IL-6,IL-8活性について検討を加え、急性期において肺胞マクロファージ表面にこれらの蛋白が高度に発現していることを示し、また肺胞マクロファージにこれらの蛋白が高度に発現していることを蛍光抗体法により示した。さらにRT-PCRを用いて肺胞洗浄液中での上記蛋白のmRNA発現を検討したところ、早期よりこれらのmRNAが発現し、かつステロイド投与により強く発現が抑制されることが示された。
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