研究概要 |
各種泌尿器科癌における予後因子を細胞生物学的に明らかにするために,これら泌尿器科癌における癌遺伝子あるいは癌抑制遺伝子の解析を行った。膀胱癌におけるマイクロサテライトDNAマーカーによるloss of heterozygosity(LOH)の存在を検討したところ,18q12.1,9p21,および17p13.1の3領域では浸潤癌においてそのLOHの存在が高率であり,浸潤癌においてはgenetic instabilityが強いことが示された。また,flow cytometryによるbromodeoxyuridine(BrdU)/DNA二重解析では膀胱癌の再発を検討すると,BrdU高標識腫瘍において再発が高率に認められた。腫瘍の増殖とサイトカインとの関連を検討すると,膀胱癌細胞においては高率にgranulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)需要体の発現が認められ,その一部の細胞においては,G-CSFによるautocrine growthの可能性が示された。この腫瘍産生サイトカインと癌の増殖に注目し,cytokine encoding geneのsecond messegerであるNuclear Factor κB(NF κB)のdecoyのcDNAをG-CSF産生膀胱癌細胞にtransfectすると,この細胞にapoptosisが誘導されることが明らかとなり,NFκBの抑制によるサイトカイン産生腫瘍の増殖抑制の可能性が示された。さらに,免疫治療における癌細胞の免疫源性をHLA class(特)拘束性の腫瘍退縮抗原(MAGE)の発現につき検討した。腎細胞癌においてはMAGE抗原の発現は認められなかったが,膀胱癌においては36例中15例(41.7%)にその発現が観察され,さらに浸潤癌においてより高率にその発現が認められた。これらMAGE抗原発現腫瘍の培養細胞株化に成功し,自己末梢血リンパ球より自己癌細胞を標的としたcytotoxic T cellの誘導が可能となった。
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