研究概要 |
(1)眼軸延長を制御する未知なる物質の発見 視性刺激を受けた網膜と視性刺激を受けていない網膜との間のdifferential displayを行い,視性刺激を受けた網膜により強く発現している46本のバンドを検出した。その46本について,reamplification,ドットブロットによるdifferential hybridization,ノーザンブロットを行い,確実に差がある3種類のcDNAを単離した。さらに,シーケンスとホモロジー検索を行い,少なくとも増幅された部分については,3種類とも既知の遺伝子とはホモロジーがないことを確認した。現在,その3種類について,ライブラリーからスクリーニングしている。 (2)網膜色素上皮における成長因子の発現調節-青色光照射との関連- これまでの研究から,網膜色素上皮細胞が強膜の細胞増殖を促進する何らかの因子を放出していることが示唆されている。一方,近視の発生,または強度近視性網膜脈絡膜萎縮の増悪に青色光が関与していることが考えられている。そこで,網膜色素上皮細胞における成長因子の発現調節に青色光が関与しているか否かを検討することを目的として初めに、波長440nmの青色光を培養網膜色素上皮細胞に照射すると,電顕的に変性像が認められることを確認した。成長因子との関連につては今後の課題として残されている。 (3)ドーパミンと成長因子との関連 実験近視眼網膜においてドーパミンが低下していることが知られており、さらにドーパミンアゴニストを投与すると近視化が抑制されるとされている。このドーパミンの作用機序に関して今回は、ミュラー細胞とドーパミンとの関連について検討した。ミュラー細胞を豚眼から単離し、培養し、継代した細胞にドーパミンを添加した。ドーパミンによって、ミュラー細胞の細胞増殖が抑制されることがわかった。 (4)機械的伸展刺激と成長因子との関連 調節や眼圧の変化といった機械的な伸展刺激が眼軸延長を制御しているという説もある。特に、調節による毛様筋の緊張と近視化との関連については古くから指摘されており、毛様筋の緊張に関する薬理学的な研究も進められてきた。今回、毛様筋の緊張によって張力を生じると考えられる網膜色素上皮や強膜の細胞に伸展刺激を加え、その生化学的変化を検討することも試みている。現在まだ進行中であるが、網膜色素上皮細胞からの成長因子の放出が伸展刺激によって増加するという結果が得られている。 (5)総括
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