咀嚼筋緊張の神経制御機構と筋スパズムの成因に関する生理学的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07407053
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 森本 俊文 大阪大学, 歯学部, 教授 (20028731)
• 研究分担者: 日高 修 大阪大学, 歯学部, 助手 (30252696) ; 増田 裕次 大阪大学, 歯学部, 助手 (20190366) ; 井上 富雄 大阪大学, 歯学部, 講師 (70184760) ; 松尾 龍二 大阪大学, 歯学部, 助教授 (30157268)
• キーワード: 閉口筋筋緊張 / 咀嚼力 / 筋紡錘 / 三又神経運動ニューロン / 生体アミン / 味覚嫌悪行動

研究概要

近年、社会構造の複雑化や社会への広範な競争原理の導入によって、心理的なストレスを訴える人が増えている。一方、口腔領域でも、ストレスに起因すると考えられる顎関節症の患者が増加している。この疾患発病の背景には、閉口筋の過緊張による筋スパズムの関与が考えられている。しかし、どのようにしてストレス(心理的な過緊張)が筋スパズムの発生に結びつくかのメカニズムについては、未だ十分に解明されていない。この問題の解決には2つの面から取り組む必要がある。1つは、心理的なストレスが果たして咀嚼筋とくに閉口筋の筋緊張を生じるかどうかの現象を確認すること、他の1つは閉口筋の緊張が生じるとすればどのような神経機構で生じるかのを明らかにすることである。本研究では主として後者について解明を志したが、引き続いて前者についても現在研究遂行中である。
筋緊張を生じるメカニズムの解明については次のような6つの研究成果を得た。(1)麻酔ウサギの大脳皮質刺激によるリズミカルな顎運動中に試料を噛んだ時の筋感覚受容器(筋紡錘)からの感覚情報によって下顎張反射が誘発され、脳幹部で自動的に閉口筋運動ニューロン活動が調節されるためであることが判明した。(2)発揮される咀嚼力の大きさと筋紡錘の活動量との間に正の相関が認められた。(3)動的反応を調節するdynamic γ-運動ニューロンの活動が特定の咀嚼過程において持続的に上昇していることが示唆された。(4)三叉神経運動ニューロンの放電パターンによって感覚神経終末を分類できる可能性を明らかにした。(5)三叉神経運動ニューロンに対する生体アミンの効果は細胞内カルシウム濃度によって修飾されることが明らかとなった。(6)味覚嫌悪行動には味覚二次中継核である結合腕傍核が関与することを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Masuda,Y.: "Modulation of jaw muscle spindle discharge during mastication in the rabbit" J.Neurophysiol.77. 2227-2231 (1997)
• [文献書誌] Hidaka,O.: "Regulation of masticatory force during cortically induced rhythmic jaw movements in the anesthetized rabbit" J.Neurophysiol.77. 3168-3179 (1997)
• [文献書誌] Kobayashi,M.: "Role of calcium conductances on spike afterpotentials in rat trigeminal motoneurons" J.Neurophysiol.77. 3273-3283 (1997)
• [文献書誌] Matsuo,R.: "Role of submandibular and sublingual saliva in maintenance of taste sensitivity recorded in the chorda tympani of rats" J.Physiol.498. 797-807 (1997)
• [文献書誌] Morimoto,T.: "Alterration in the bite force and EMG activity with changes in vertical dimension of edentulous subjects" J.Oral Rehabil.23. 336-341 (1996)
• [文献書誌] Abekura,H.: "Comfortable zone of the madible evaluated by the constant stimule method" J.Oral Rehabil.23. 330-335 (1996)
• [文献書誌] Takada,K.: "Tongue,jaw and lip muscle activity and jaw movement during chewing efforts in man" J.Dent.Res.75. 330-335 (1996)
• [文献書誌] Masuda,Y.: "Perception of distances on the tongue,the thumb and the face in humans" Jpn.J.Qral Biol.38. 115-121 (1996)
• [文献書誌] Matsuo,R.: "Inhibitory effects of sympathetic stimulation on activities of masseter muscle spindle and jaw ierk reflex in rats" J.Physiol.483. 239-250 (1995)
• [文献書誌] Takada,K.: "Application of polynomial regression modeling to automatic measurement of periods of EMGactivity" J.Neurosci.Methods. 56. 43-47 (1995)
• [文献書誌] Matsuo,R.: "Neural activity of chorda tympani mechanosensitive fibers during licking behavior in rats" Brain Res.689. 289-298 (1995)
• [文献書誌] Morimoto,T.: "Elsevier Science" Brain and Oral Functions, 648 (1995)