研究概要 |
教室に従来より配備されている6自由度顎運動測定器において,クラッチの形状とLED配置および解析ソフトウェアの開発を行った.これにより無拘束自由運動時の上顎と下顎の機能運動を,同時に高精度で測定できるようになった.この装置を用いて正常者における顎機能運動を計測した結果,下顎の開閉口運動および咀嚼運動に同期して上顎が協調運動を行っていることが明かとなった. すなわち,タッピングに代表される開閉口運動時には,上顎が開口時は上方,閉口時は下方へと下顎とは逆方向へ周期的に運動していることが明らかになった.また,咀嚼運動時には上下運動に加えて左右方向への運動成分がみられ,これらの上顎運動の運動範囲は開口量や食品の性状と関連があることが認められた. これらのデータをもとに,本研究への補助金によって新たに導入された赤外線反射光方式の運動測定装置について,測定法および解析ソフトウェアに関して検討を加えている. この研究の平成7年度における研究計画は,指標とする上顎運動を的確に計測する方法を構築することにあった.現在のところ基本的な測定系の確立はほぼなされ,基本的なデータに関して得られた知見は学会等において報告を済ませているので初年度の目的は達成されたと考えられる. 研究の遂行に伴い,上顎運動は運動範囲が小さいこと,床面を基準座標系とするため体動の影響が測定結果に影響することなどが明かとなってきた.これらの問題点を解決するため,顎運動測定装置と赤外線反射光方式の運動測定装置の同時計測による正確なキャリブレーションや,臨床応用に際して汎用性のある測定条件を求めることが今後の課題として残されている.
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