ムチンによる細胞交通と病態の制御

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07407063
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 入村 達郎 東京大学, 薬学部, 教授 (80092146)
• 研究分担者: 山本 一夫 東京大学, 薬学部, 助手 (20174782) ; 今井 康之 東京大学, 薬学部, 助手 (80160034) ; 辻 勉 東京大学, 薬学部, 助教授 (00143503)
• キーワード: ムチン / 糖鎖 / 細胞接着 / レクチン / 癌転移 / 白血球 / マクロファージ / O-グリュシレーション

研究概要

本研究の目標は、数多くのO-結合型糖鎖を含む細胞表面分子であるムチンの、ペプチド部分と糖鎖部分各々の生合成制御と、ムチン発現に伴う細胞表面のパターン変化、さらにその結果としての細胞交通の変化を走査することにある。本年度はムチンの提示する糖鎖を認識する分子であるレクチンに関する新たな知見を中心に次のような成果を得た。(1)ヒトマクロファージの発現するC型レクチンの組織化学的な検出が、モノクロナル抗体の作製と、in situ hybridization法の確立によって可能になった。(2)これらの方法により、ヒト癌(肺癌、乳癌、及び子宮体癌)の所属リンパ節の、傍皮質領域、髄索、及び胚中心に、マクロファージレクチン発現細胞を検出した。(3)ヒト腎癌細胞にMUC1ムチンcDNAをトランスフェクションして発現させることにより、交通パターンが変化することを証明した。特に肺転移性の上昇が見られた。(4)蛍光画像解析装置を用いたヒト大腸癌細胞の分布パターン解析をおこなった。ムチン上の糖鎖を改変するために糖転移酵素遺伝子(フコース転移酵素)を強制発現させたところ、門脈注後の肝臓での分布が変化した。すなわち肝への集積が5分後から24時間後まで継続的に高かった。(5)19種のヒト大腸癌細胞株における種々のムチンコアペプチド遺伝子の発現を比較検討し、これらが特定の糖鎖抗原の発現と関連しているかどうか査定した。その結果、MUC1、MUC2、MUC5AC、MUC5B、MUC6のいずれもが、特定の糖鎖抗原の発現と関連しなかった。しかし、硫酸化ムチンの発現にはMUC5Bの発現とムチンの硫酸化がともに必須であることなど新たな知見が得られた。(6)ムチンに発現するシアリルルイス-X糖鎖のうち、糖鎖伸長型のものに特異性の高いモノクロナル抗体FH6の認識する糖鎖を発現した細胞には、E-セレクチン発現細胞に接着しないものがあるという、シアリルルイス-X糖鎖の機能に関する新たな知見を得た。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki,N.: "Molecular cloning and expression of cDNA encoding human macrophage C-typelectin:its uhique carbohydrate〜" The Jourhal of Immunology. 50. 128-135 (1996)
• [文献書誌] Yamamoto,M.: "A novel monoclonal antibody specitic for sialylated MUC1 mucin" Japanese Journal of Cancer Reserch. 87. 488-496 (1996)
• [文献書誌] Kojima,K.: "Characterization of carbohydrate-binding protein P33/41" The Journal of Bilogical Chemistry. 271. 7679-7685 (1996)
• [文献書誌] Mizuochi,S.: "Unique tissue distribotion of a mouse macrophage C-type lectin" Glycobiology. (1996)
• [文献書誌] Nakamori,S.: "Expression of carbohydrate antigen siulyl Lea:a new functional proghastic factor in gastric cancer" The Journal of Clinical Oncology. (1996)
• [文献書誌] Nakamori,S.: "Inrolvement of carbohydrate antigen sialyl Lewis-X in colorectal cancer metastosis" Dis Cdon Rectom. (1996)