研究概要 |
ヒトの遺伝子研究が進むにつれて,正常個体であればその材料は何でもよかった時代から,民族や個人の違いを比較できるまでに進んできている。しかし,従来の分子生物学的な研究,ゲノムの研究は日本においてさえ,主として白人種由来の材料を用いて行われてきており,日本人材料の整備は全く不十分である。本研究の目的は,日本人由来の遺伝子研究材料を整備し,Y染色体の構造と機能の研究を日本人由来の材料で行うことである。 本年度は,代表的日本人を明らかにする目的でY染色体の多型について解析した。Y染色体は多型の少ない染色体であるとの報告があるが,今回の研究で新しい2つの多型を発見した。1つは睾丸決定因子SRYのエキソン内の同義置換であり,現在のところ日本人集団でだけ見られる。もう一つは,XY相同性をもった領域内の(CA)リピートであるが,これはX染色体とY染色体でリピート数の分布範囲が異なることが分かった。こちらの多型は,白人,黒人,アジア人の全てに見られる。また,従来から知られていた47Z多型の解析方法をPCR法をもちいた簡便なものに改善した。これらに加えて,他の研究者らが発表したYAP多型を解析した。これら4つの多型を解析し,染色体のハプロタイプ化を行ったところ,日本人のY染色体を5つのタイプに分けることができるようになった。Y染色体のルーツを追うために,これらのハプロタイプを韓国人においても解析している。
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