研究概要 |
ヒトの遺伝子研究が進むにつれて,正常個体であればその材料は何でもよかった時代から,民族や個人の違いを比較できるまでに進んできている。しかし,従来の部に生物学的な研究,ゲノムの研究は日本においてさえ,主として白人種由来の材料を用いて行われてきており,日本人材料の整備は全く不十分である。この研究では,Y染色体の構造と機能の研究を日本人由来の材料で行うという目的の下,日本人のY染色体の分類を試み,またその分類を他民族と比較した。 Y染色体は多型の少ない染色体であるとの報告があるが,我々は新しい3つのDNA多型を発見し,これと従来知られているYAP多型とあわせた4つの多型について,そのハブロタイプを日本人,韓国人,白人,黒人で解析した。その結果,日本人のY染色体を4つのタイプに分けることができるようになったが,各ハブロタイプにおけるそれぞれの多型の組み合わせからこれらの多型の出現順序を推定することができた。仮に4つのハブロタイプを1から4まで番号を付けると,ハプロタイプ1は全民族共通であるが,2は黒人で頻度が高く,日本人,白人でも見られるものの韓国人には全く見られず,ハプロタイプ3,4は日本人に多く,韓国人に少数見られるだけで白人および黒人には見られなかった。ハプロタイプ1が原型で,2と3・4は別々の機会にハプロタイプ1から分岐し,ハプロタイプ4はハプロタイプ3から分岐したものと考えた。 この4つの系統のY染色体について,細胞供与者のインフォームドコンセントを得た上で,その細胞ラインを作成し今後の研究につなげることにした。
|