研究概要 |
本研究では、アルツハイマー型老年性痴呆(senile dementia of the Alzheimer type : SDAT)および脳血管性痴呆(vascular dementia : VD)それぞれについて、「脳活性化訓練デイケア」(脳活介入)を行うことにより、介入の実施が痴呆患者の日常生活動作(ADL)や知的機能に対して、その自然経過を阻止、緩和あるいは改善できるのかを検討した。対象は愛全病院を受診した患者、SDAT135名およびVD231名の計348である。 脳活介入のできた176名について、介入前後の効果をADLの評価はBarthel Index (BI)、知的機能評価にはN式老年精神状態尺度(NMスケール)で調査し、比較検定した。多変量ロジスティック解析により、ADLと知的機能への効果のあった要因を9要因(脳活介入,痴呆重症度,発症年齢,性別,危険要因,投薬,自主的リハビリテーション,家族のサポート,疾患別)からスクリーニングした。ADLに効果の認められた要因は、「脳活介入」「自主的リハビリテーション」「家族のサポート」で、知的機能に効果を示した要因は、「脳活介入」「VD」「家族のサポート」であった。単変量解析Kaplan-Meier生命表法でこの8要因を疾病別(SDATとVD)に生命曲線とその検定を行った。さらに、Coxの比例をハザード法により、痴呆の生命予後に影響を及ぼした要因の多変量解析を行った。これら4つの解析の結果、脳活介入はADLと知的機能に効果を示し、その悪化を阻止あるいは緩和させ。痴呆患者のQOLを高めることを示唆した。 本年度、重視したのは、痴呆患者は必ずしも痴呆が最大の困難ではなく、多様な問題をかかえ、とくに本研究が対象とする合併症のないSDAT、VDよりも種々の合併症をもつ患者が多いことから痴呆対策は総合的なケアマネージメントの一部でなければならないことを注目した。 愛全病院ではこのような点に関係して、本年から介護を中心とするケアマネージメントの仕組みを作り、医師もそれに従うこととし、前年までは調査から棄却した合併症のある患者をふくめて、対策にとり入れている。しかしまだその結果をを解析する段階ではない。
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