研究概要 |
【方法】 ペントバルビタール麻酔犬の左肺下葉(LLL)を、別の犬(ドナー犬)の股静脈血を用いて一定流量で灌流した。LLL、ドナー犬あるいはLLLとドナー犬に同時に、1.2%, 2.4%のイソフルラン(Iso)を20分間吸入し、LLL平均肺動脈圧(PAPLLL)の変化を観察した(C群)。U46619 (thromboxane analog)による肺高血圧状態下でC群と同様に実験を施行した(PH群)。また、NO合成酵素阻害薬であるL-NNA (30mg/kg)を前処理した後に、正常肺動脈圧下(L-NNA-C群)あるいは肺高血圧状態下(L-NNA-PH群)で、同様の実験を施行した。統計学的解析にはANOVAとSheffeを用いた。 【結果】 C群、PH群ともに、IsoのLLLあるいはドナー犬単独投与および同時投与においてPAPLLLは変化しなかった。L-NNA-C群では、1.2%、2.4% ISOのLLL単独投与により、PAPLLLは18.4±1.1から16.4±0.9mmHg、17.9±0.7から15.5±0.7mmHgにそれぞれ有意に減少した(P<0.01)。ドナー犬単独投与ではPAPLLLの低下は、LLL単独投与と比較してより小さかったが、同時投与では著明なPAPLLLの低下が認められた。L-NNA-PH群ではIso投与により、すべての濃度、投与法においてPAPLLLの低下が認められたが、その低下作用はL-NNA-C群と比較して著明な差はなかった。 【まとめ】 L-NNA前処理下でのIsoの肺血管拡張作用は、IsoがNO抑制による肺血管収縮作用とNO以外の血管拡張作用を有することを示唆する。この作用は血液を介入するというよりも肺血管自体に対する作用であり、濃度依存性であるが、肺血管toneにはあまり影響されない。
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