研究概要 |
本研究の目的は、プロスタグランジンの有する多種多様な生理作用を、それぞれの作用を媒介する受容体の構造と機能から明らかにし、生体調節の機構を分子レベルで理解することである。研究成果は; (1)各プロスタノイド受容体をCHO細胞にパ-マネント発現させ、それを用いてリガンド結合活性とG蛋白活性化を明らかにした。(2)受容体のカルボニル基を認識するドメインがリガンド結合とG蛋白活性化に関与することをプロスタグランジンE_2 (PGE_2)受容体サブタイプEP3を用いて、明らかにした。(3)このPGEのカルボン酸と第7膜貫通部位のアルギニン残基(Arg-309 : R309)との相互作用を、種々の点変異(R309Q, R309N, R309L)受容体を作成し、これら受容体に対するカルボン酸修飾誘導体の結合活性やGi活性を比較した結果から、水素結合が必要充分であることを明らかにした。(4)カルボニル基の非解離は、GsとGqの活性化に必須であるが、Giの活性化には関係ないことを明らかにした。(5)各プロスタノイドのゲノム解析を行い遺伝子ターゲッテイングベクターを構築し、得られたcDNAをES細胞に導入し、相同組み換え細胞をクローニングし、胚細胞に注入し、これを偽妊娠マウスに戻し、キメラマウスを作製し、ホモのノックアウトマウスを作成することに成功した。(6) PGF受容体のノックアウトマウスの雌は、分娩において異常を起こすことがわかった。その成因は、PGF受容体の黄体特異的発現とそのアポトーシスによる退縮不能である。(7) EP2とEP4ノックアウトマウスの形質発現を検討中であるが、EP4ノックアウトマウスにおいて顕著な変化、すなわち生後1〜2日以内に循環系の障害により死亡がすることがわかった。
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