研究概要 |
1996年夏に,浚渫の行われていない諏訪湖北部および中心部で,空気圧入式ピストンコアラーを用いて,全長約2m(過去約800年間)の湖底柱状堆積物を採取した。堆積物は,2.5cm間隔に分割し,色調,帯磁率,比重,孔隙率,鉱物組成,および炭素,窒素,硫黄量を分析した。その結果,特に有機炭素量が気候変動の有効な指標となりうることが明らかになったので,諏訪湖の結氷・御神渡り記録との関係を検討・考察した。 500年間の結氷・御神渡り記録から,1500年代末に結氷時期が不連続的に早まった後,やや周期的な変動を繰り返しながら徐々に結氷日が遅れる傾向にあることがわかった。一方,湖底堆積物試料に関して,有機炭素量は珪藻も含めた植物プランクトンの繁殖量を示し,気候変動と密接な関連があると考えられる。元素分析結果による炭素/窒素比率によれば,ほぼ10.5〜13前後を示し,陸上起源とプランクトン起源の有機物寄与は柱状堆積物を通じてほぼ同じ比率であったと考えられる。従って,有機炭素量の変動は気候変動を示している可能性が高い。 結氷記録や観測データから,1780年前後や1900年前後は寒冷な時期で,18960年代や1940年以降は温暖な時期であることが知られているが,前2者の有機炭素量は後2者にくらべて少なく,柱状堆積物の分析結果は気候変動をよく反映していることがわかった。
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