研究概要 |
能動的視覚パターン認識システムの設計指針を得るために,関連する脳のメカニズムに注目し,その機能を実現する種々の神経回路モデルを構成した. 例えば,脳の中での空間記憶機構をヒントして地図を連想するシステム(神経回路モデル)を実現した.このシステムは,地図のような空間パターンを断片的な形で取り込み,その記憶をもとに広範囲の空間のイメージを次々と連続して想起する.システムの能力を試すために,鉄道線路の記入されたヨーロッパ全域の地図を,重なり合った多数の断片的な地図に分割し,システムに記憶させてみた.その後,スコットランドからイタリアまで汽車で旅行する状況を想定し,スコットランドの地図の一部をイメージ層(頭の中に思い浮かべているイメージが現われる細胞層)に入力した.すると,この初期パターンが引き金になって,パリを経由しイタリア南部に至る経路の地図がとぎれることなく想起されてきた. また,当研究グループで研究を進めてきたパターン認識システム,ネオコグニトロンを,実世界の文字認識に適用するための研究を進めた.その結果,大規模文字データベースETL-1の手書き数字パターンに対して,教師なし学習によって97%以上の認識率を得た.学習にはwinner-take-all型の競合学習を用い,回路内の特徴抽出細胞のしきい値を,認識時には学習時よりも大きく選んだ.しきい値の最適値が,回路規模に伴ってどのように変わるかを理論的実験的に検討した.競合学習において,学習パターンのカテゴリー情報を利用するために,回路の最上位段には新しい学習方式を用いた.
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