研究概要 |
本研究の目的は、メディア統合に基づき,情報の表現に留まらず,情報の獲得・理解,伝達あるいは交流など,各種の知的活動を支援するための方策を明らかにしようとすることであった.まず,マルチメディア技術を支える基礎理論として,情報が何らのメディアによって表示される際の基本構造,および,メディア変換の基本的仕組を明らかにしようとした.マルチメディア技術は今後の基幹技術の一つと位置付けられながら,その技術を支える理論的な枠組みを持たないまま,実用化が進んでおり,マルチメディア技術の将来のためにも,本研究の目標達成のためにも,その欠陥を埋めておくことが重要であると判断したからである.その結果,メディアにより表現された情報には情報の内容に留まらず,表示のための情報が備わっていること,またメディア変換に当たっては,この表示のための情報を所要のメディアに適合した記述に変換すればよいことを明らかにした.これを基礎に情報を加工し,メディア変換を通じて,効果的なメディア統合を実現するという基本構造と技法について論じた.この結果を例証するため各種の知的活動支援システムを作成した.情報の獲得・理解支援については映像と音楽情報の統合およびユーザの選好性を重視した地図情報処理システムの作成,また情報の伝達あるいは交流については対話型3次元形状モデル生成システムの作成あるいはエージェント間の概念学習を含む意図伝達方式の提案,さらには情報提示などを支援するものとして文書画像中のグラフ図形の表示変換システムを作成した.先の地図情報システムもその一つと考えられる.しかしメディア統合の際の重要な課題である適切なメディア選択の問題については人間の情報感受性特性など認知科学的な検討が必要となるため今後の課題とした.
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