研究概要 |
本年度はウラシル塩基部位と5'リン酸基間にプロピレンリンカーを介して共有結合させることによって、コンホメーションがC3'endo型にほぼ完全に固定された5'ウリジル酸を実際にオリゴヌクレオチドに組み込んで、その物理化学的性質を調べることにした。まず、はじめに、固相合成法によってこの環状構造をDNA/RNAの5'末端に導入するため、プロピレン鎖の環状構造をもつ2'-メチルウリジル酸の3'ホスホロアミダイト体の合成の検討をおこなった。その結果,3'ホスホロアミダイト体を合成することに成功し、実際にデカチミジル酸とデカウリジル酸の5'末端にそれぞれ、環状構造をもつオリゴヌクレオチドを合成することができた。この2種類のオリゴヌクレオチドと相補的オリゴマーであるデカデオキソアデニル酸とデカアデニル酸との二重らせんを形成させ、その熱融解曲線を測定することで、二重らせんの安定性の評価を行い、この環状構造による安定化効果を調べた。その結果、デカチミジル酸の5'末端に組み込んだ環状構造をもつものが、選択的にデカアデニル酸と強固な二重らせんを形成することができることがわかった。一方、この環状構造をデカチミジル酸とデカウリジル酸の真ん中に組み込んだオリゴヌクレオチドも合成して、そのデカデオキソアデニル酸とデカアデニル酸との二重らせんを形成能について調べた。その結果、分子力学計算からの計算結果と、二重らせん形成能からの考察に基づき、環状構造のリン酸基に含まれる2つのジアステレオマ-のうちRpの絶対配置をもつオリゴマーがより強く結合できることがわかった。Sp体は逆に核酸分子をベントさせる手掛かりとして活用できることも示すことができた。
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