1.分泌型蛋白質の膜内移動の分子機構の解明 分泌型蛋白質であるOmpAの成熟体部分に分子内S-S結合を導入すると、ループ構造の形成に伴う立体障害によって膜透過が途中で停止する。S-S結合の位置を連続的に変えたOmpAを作製し膜透過を調べたところ、それらの膜透過の停止は連続的ではなく約30個のアミノ酸残基ごとに起こった。この分子機構を解明するためOmpAの成熟部分に点在する弱い疎水性領域に注目し、それらを欠失させたり移動させたりして膜透過を調べた。その結果、膜透過の停止は疎水性領域に依存することがわかった。これらの結果は膜内に存在する透過装置が膜透過途中の蛋白質の疎水性度をかなり厳密に認識し、その膜内移動を制御していることを示している。 2.透過装置の高次構造の解明 申請者は透過装置の構成因子であるSecA、SecY、SecE、SecG蛋白質の大量精製法を確立している。このうちSceAに関してその結晶化に成功したが、残念ながらX線解析に耐えうる結晶ではなかった。今後結晶解析に耐えうる良質なSecA結晶の取得に努力する。またSecY、SecE、SecG複合体の結晶化を試みる。 3.動物ER系における膜透過機構の解明 シグナルペプチドの疎水域を系統的に変化させた前駆体蛋白質を用いて動物ER系における膜透過を調べた。その結果、シグナルペプチドの疎水域の強さが新生ペプチドの伸長阻止(elongation arrest)、膜透過反応の両方で重要な役割を果たしていることがわかった。またそれぞれの特異性が異なることを見いだした。
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