研究概要 |
我々が先に分離した3つの異なる相補性群に属するペルオキシソーム欠損性チャイニーズハムスター卵巣(CHO)変異細胞のうち、Z65細胞につづきもう1つのCHO変異細胞ZP92に対する相補遺伝子、ペルオキシソーム形成因子-2(PAF-2, 105kDa)cDNAのクローニングにも成功し、この成果を基に現在同一相補性群(日本C群、アメリカIV群、ヨーロッパ3群)Zellweger症候群患者の病因遺伝子を解明中である。本年度新たなCHO変異細胞の分離を、先にその有用性を示したペルオキシソーム欠損性変異細胞選択分離法であるP90H/UV法を用いて試みた。その結果、新たな2つの相補性群に属するCHO変異細胞ZP105, ZP139およびZP104, ZP109の分離に成功した。このうちZP105とZP139はヒトペルオキシソーム欠損症相補性群II群に属することが、またZP104とZP109についてはいずれのヒト相補性群にも属さないことが相補性群解析の結果判明した。昨年の夏(1995年)、ペルオキシソーム欠損症相補性群(アメリカII群)の病因遺伝子が、ペルオキシソーム生合成異常酵母変異株相補遺伝子Pichia pastoris PAS8(S. cerevisiae PAS10)のヒトホモログ(PXR1, 68kDa)であり、我々が先にin vitor系で見出したSKLモチーフ局在化シグナルのレセプターとしてGouldらにより報告された。これは多くの酵母変異株相補遺伝子が近年報告されているなかで、ヒトの病因遺伝子解明に至った最初のケースとして注目されている。我々は本年度新しく分離しこれと同一相補群に属すると判明したペルオキシソーム欠損性CHO細胞ZP105およびZP139を用いて、PXR1について詳細に解析中である。従って約10相補性群に分類されるペルオキシソーム欠損症のうち現在までにPAF-1, PAF-2, PXR1の3つの病因遺伝子が解明されたことになる。
|