研究概要 |
イ)ペルオキシソーム欠損CHO変異細胞株の分離と生化学解析 P9OH/UV法及び蛍光抗体染色法によりペルオキシソームを欠損した10個の変異細胞、ZP104,ZP105,ZP106,ZP107,ZP108,ZP109,ZP110、ZP111、ZP114およびZP139を得ることができた。さらにこれらの変異細胞についてその他の細胞生化学的諸性質を検討したところ、先に分離した変異細胞Z24,Z65およびZP92と同様の表現型を示し、ペルオキシソーム欠損性変異細胞と推定された。 ロ)相補性群分類 つぎに、これらの新たに分離したCHO変異細胞および先に分離したZ24,Z65,Z92を含めた細胞間相補性群解析を相補遺伝子(PAF-1,PAF-2)導入法および細胞融合法により検討した結果、4つの新しい相補生群が分離されたことが判明し、現在までに合計計7種類のCHO変異細胞が分離されたことになる。また患者由来細胞との融合試験から、ZP105/ZP139はヒト相補性群II群(アメリカ)と、またZP104/ZP109はIII群とそれぞれ同じ相補性群に属することも明らかになった。以上のことから、ヒトを含め哺乳動物細胞において12の相補性群が明らかとなり、ペルオキシソーム形成には少なくとも12以上の遺伝子が必要と考えられる。 ハ)ペルオキシソーム局在化シグナル(PTSI)レセプター異常の解析 ZP105/ZP139変異細胞に対し、酵母変異株相補遺伝子Pichaia pastoris PAS8のヒトホモログとしてクローニングされたヒトPTS1レセプター(PTS1R)cDNAの導入によりPTS1-タンパク質の輸送が正常化された。PTSIRには602アミノ酸残基のshort isoformと639残基のlong isoformがあり、何れもPTS1-タンパク質の輸送を正常化したが、PTS2-タンパク質の輸送異常はshotr PTSIRでは相補されず、long isoformのみによって回復された。このことからPTSIRはPTS1-のみならずPTS2-タンパク質の輸送に関わっていることが示唆され、現在その詳細について解析中である。
|