研究課題/領域番号 |
07408017
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生物物理学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桑島 邦博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (70091444)
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研究分担者 |
伊倉 貞吉 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50251393)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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キーワード | 分子シャペロン / シャペロニン / GroEL / 折れたたみ機構 / 球状タンパク質 / α-ラクトアルブミン / スタフィロコッカルヌクレアーゼ |
研究概要 |
この研究では、細胞内でのタンパク質構造形成とin vitroの巻き戻り反応との関連を調べる目的で、α-ラクトアルブミン(αLA)とスタフィロコッカル・ヌクレアーゼ(SNase)の巻き戻りの速度過程に及ぼすシャペロニンGroELの影響をストップフロー蛍光スペクトルを用いて調べた。その結果、SNaseとアポαLAとでは巻き戻り反応に対するGroELの影響が、見かけ上、大きく異なっていることがわかった。 GroELの濃度を変えてタンパク質の巻き戻り反応を測定し見かけ上の巻き戻り速度を求めると、アポαLAで巻き戻りの速度定数が変化するのに対し、SNaseではフリーで巻き戻る時の主要な速度過程の変化量が小さくなり、GroELが過剰になるとGroELとの結合状態で巻き戻る遅い過程のみになった。この時、それぞれの過程の速度定数に大きな変化はなかった。GroEL存在下での巻き戻り反応のイオン強度依存性から、上の違いが二つの標的タンパク質の静電的性質の違いによりもたらされることが明らかとなった。αLAは酸性タンパク質であり中性pHで正味電荷-7を持つのに対し、SNaseは塩基性タンパク質で正味電荷は+12である。一方、GroELは強い酸性タンパク質でモノマー1分子当たり-20(14量体では-280)に帯電している。従って、αLAとGroELとの間には静電反発力が働くのに対し、SNaseとGroELとの間には静電引力が働く。本研究により、シャペロニンGroELの標的タンパク質認識には疎水性相互作用とともに長距離の静電相互作用も重要であることが明らかになった。 次に我々は、GroELと標的タンパク質は可逆的に結合するが、GroELとの結合状態でも標的タンパク質が巻き戻る経路が存在すると言うスキームを立て、計算機上でGroELの影響を受けながらタンパク質が巻き戻る過程をシミュレートした。その結果、上の二つの標的タンパク質の巻き戻りにたいするGroELの影響は見かけ上大きく異なったが、いずれも、同一の反応スキームで説明されることがわかった。
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