細胞周期進行の抑制とその解除の分子システム

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07408022
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 岸本 健雄 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (00124222)
• 研究分担者: 奥村 英一 東京工業大学, 生命理工学部, 日本学術振興会特別研 ; 立花 和則 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (60212031) ; 大隅 圭太 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (20221822)
• キーワード: 細胞周期 / 減数分裂周期 / 受精 / G2 / M / G1 / S移行 / 核外移出 / cdc2キナーゼ / Junキナーゼ

研究概要

卵細胞型細胞周期に特異的な細胞周期の停止とその解除、および抑制の分子機構を解明することが本研究の目的であり、本年度は以下の成果を得た。
1.G2期停止と解除:M期開始因子であるcdc2ナキ-ゼは、G2期に停止したヒトデ未成熟卵中では細胞質に局在し、G2期停止の解除に際して核内に集積する。この分子機構を解除したところ、cdc2ナキ-ゼはG2期でもM期でも常に核内に移行しているが、G2期には核からの排出が起こる結果見かけ上細胞質局在となり、M期開始にあたってはこの核外移出が停止するために核内集積が起こると判明した。さらに、核外移出はサイクリンB中のcytoplasmicretention signal配列に依存し、そのうちのSer/Thr残基のリン酸化が核外移出能の消失をもたらす可能性が判明した。現在、このリン酸化をひきおこるキナーゼを同定中である。
2.減数分裂間着にけるS期抑制:我々が開発したアフリカツメガエル卵抽出物由来の"meiotic extracts"を用いて解析したところ、減数第1分裂の終了に際しては、M期サイクリンの分析が停止した時点では、cdc2キナーゼを不活化するweelファミリーキナーゼは未だ再活性化されていないと判明した。この結果、新たに合成されたサイクリンBは自動的に活性型cdc2キナーゼを構成し、S期をスキップして減数第2分裂への移行が実現するとみなされる。
3.成熟未受精卵のG1期停止:ヒトデ成熟未受精卵のG1期停止は、MAPキナーゼ活性に依存することを初年度に明らかにした。ところが、このたびMAPキナーゼスーパーファミリーに属するJunキナーゼも、G1期の停止と受精によるその解除に際して、MAPキナーゼと全く同じ活性変動を示すことが判明した。これら両キナーゼの活性を運動させるシステム、および成熟未受精卵におけるG1期停止およびS期抑制における役割を、再検討中である。

研究成果

• [文献書誌] K.Tachibana et al.: "MAP kinase links the fertilization signal....." EMBO J.16. 4333-4339 (1997)
• [文献書誌] N.Monma et al.: "Phosphorylation of retinobl'astoma protein at....." Neurosci.Lett.235. 45-48 (1997)
• [文献書誌] T.Itoh et al.: "Phosphorylation states of microtubule-associated....." Biochemistry. 36. 12574-12582 (1997)
• [文献書誌] K.Ookata et al.: "MPA4 is the in vivo substrate for cdc2 kinase...." Biochemistry. 36. 15873-15883 (1997)
• [文献書誌] T.Okano et al.: "In vivo regulation of cyclin A/Cdc2 and....." Develop.Biol.(印刷中). (1998)
• [文献書誌] 永井由貴子・岸本健雄: "サイクリン分解の制御機構" 蛋白質・核酸・酵素. 42. 2225-2232 (1997)
• [文献書誌] T.Kishimoto and E.: "Progress in Cell Cycle Researce,vol.3" Okumura(分担)Plenum Press(New York), 241-299 (1997)
• [文献書誌] 岸本健雄(分担): "細胞機能と代謝マップII(日本生化学会編)" 東京化学同人 (印刷中), (1998)