研究概要 |
β-amylodogenesisの最初期はdiffuse plaqueとされている。diffuse plaqueの特徴は抗β抗体で淡く染まる境界不鮮明な老人斑である。微細形態学的には既にamyloidfibrilが散在している。しかしこの少量のamyloid fibrilが光顕レベルの免疫反応性を全て説明出来るのかどうか不明である。実際電顕レベルの免疫細胞化学で細胞表面膜の染色が報告されている。本研究はamyloid fibril形成前にあると想定される“preamyloid"を生化学的に検証しようとするものである。diffuse plaqueに富む脳を出発材料にしてショ糖密度勾配法を用いて不溶性画分を1.0/1.2,1.2/1.4,1.4/2.0Mショ糖界面に分画した。各画分のAβ免疫反応性をAβタンパクのC末端(Aβ42)を認識するBC05で検討した。その結果Aβ免疫反応性は1.0/1.2の軽い画分に多く回収された。一方diffuse plaqueが少なくmature plaqueの多い脳からはAβ免疫反応性は1.4/2.0に集中した。症例を増やして検討したところdiffuse plaqueの数と軽いAβの量とは強い相関を示した。この軽いAβを検討し、以下のことが明らかとなった。1)SDS電気泳動で移動度が遅れること;2)BC05には反応するがAβのN末端および中間部分を認識する抗体とは反応しないか反応が弱い;3)脱脂の操作で重い画分へ移行し、免疫反応性は回復すること。以上からこのAβには脂質が結合しておりそのためその性質が変化したと考えられた。この脂質はメタノールで抽出されるが、アセトンまたはクロロホルムでは効果の無いことからガングリオシドの可能性が考えられた。ガングリオシドの中のGM1と特異的に結合するコレラトキシンを試みたところこのAβ種と強く反応することが分かった。すなわちこのAβはGM1ガングリオシドと結合しておりこのため上記のような性質を示したと考えられた。
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