研究課題/領域番号 |
07408026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 智幸 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40092415)
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研究分担者 |
辻本 哲宏 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40212055)
真鍋 俊也 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (70251212)
小野寺 加代子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00053091)
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キーワード | PKC / NMDA受容体 / ピペット内灌流 / ホルボールエステル / Mgブロック / ホールセル記録 / リン酸化 / シナプス可塑性 |
研究概要 |
記憶学習の細胞内メカニズムであるシナプス可塑性の根底にあるシナプス感受性調節機構を明らかにする目的で、本最終年度は特にNMDA受容体のPKCリン酸化による修飾機構の研究を行った。延髄台形核(MNTB)ニューロンの細胞体からホールセル記録を行い、前蝸牛核からの入力線維を電気刺激してEPSCを誘発した。EPSCのAMPA受容体成分をCNQXによってブロックしてNMDA受容体成分を記録後、パッチピペット内灌流によっPKCの活性化剤ホルボールエステルPDBu(1μM)を細胞内投与した。注入後数分以内にNMDA-EPSCは増大した。これに対して、NMDA受容体成分がブロックされる-70mV(1mM Mg)でAMPA-EPSCを記録してPDBuを投与したところ、作用は全く認められなかった。これらの結果はホルボールエステルの作用がNMDA受容体に特異的であり、かつ後シナプス性であることを示唆する。次に、これらPKC活性剤の効果がMgブロックの解除によっているか否かを検討した。灌流液のMgをすべて除去後も、PDBuによるNMDA-EPSCの増強は同程度に認められた。また、電位を+50mVに固定してMgブロックの影響を除去後にPDBuを与えた場合にも同様の増強が認められた。この結果はPKC活性剤の効果がMgブロックの解除によるとの仮説を支持しない。 この実験結果からPKCの活性化によりNMDA-EPSCが増強することが明らかになった。この作用はNMDA受容体がPKCによってリン酸化されることによると考えられる。PKCによるNMDA-EPSCの増大は、より多量のCa流入を誘発することによって、シナプス可塑性、特にLTPの誘発を促進すると推論される。PKCは代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)を初めとする代謝型受容体の下流にあり、LTP誘発におけるmGluRのターゲットとして働くと推察される。
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