研究概要 |
強い抗癌活性の誘起に大きく関与しているC-1027の高いDNA切断活性とユニークな2本鎖同時切断の作用機構を解明するため、高分解能NMR法を駆使してDNA-C-1027クロモホア-複合体の構造解析を行った。C-1027のエンジイン型クロモホア-は還元剤非存在下でもバーグマン反応が進み不安定であるので、芳香環化されたクロモホア-を用い、またDNAとしてはオリゴヌクレオチドd(GTATAC)_2を使用した。NMRの測定法としては、NOESY,COSY,およびHOHAHAを用い、スペクトルの帰属を行った後、NOESYスペクトルのDNA-クロモホア-複合体の分子間NOEピークから、2分子間の相互作用を明らかにした。その結果、C-1027クロモホア-はベンゾキサジン環部分でTA塩基対間にインターカレートし、またアミノ糖鎖部分でAおよびT塩基と静電的相互作用を行い、DNAマイナ-グルーブ側からDNAに結合していることが明らかになった。さらに、C-1027のエンジイン型クロモホア-は、その3位のラジカルがDNAの3側のAを攻撃し、6位のラジカルが反対鎖のTを攻撃していることが示唆された。これらの研究成果をもとに、DNA2本鎖同時切断能が高く、また強い制癌活性が期待される新規エンジイン化合物の分子設計を行うと共に、エンジインの化学に新しい道を開いた。
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