研究概要 |
本研究では、エンジイン抗癌抗生物質の主作用と予想されるDNA切断反応を化学レベルで詳細に追究し、構造・活性相関を明らかにすると共に、活性発現制御の分子作用機序の解明とそれに基づく有用な新規分子の設計・創製を目指している。本年度は特にDNA切断の心臓部となる高度に歪んだ9員環エンジインの開発、トリガーシステムの導入によるビラジカル種発生の制御、DNA認識部位の導入による塩基選択的なDNA鎖切断を目的とした超歪み9員環分子の設計、合成および機能について検討を行った。インターカレーターや塘鎖の導入されたエンジインアナログを新規合成し、DNA切断活性の向上とDNA塩基配列の認識について調べた結果、ナフトエ-ト基をもつアナログの活性はナフトエ-ト基のないアナログよりもDNA切断活性が1桁向上し、10μM程度の濃度でDNA切断活性を示した。また、塘鎖アナログでは、DNA塩基配列を認識していることが明らかになった。そこで、様々な塘を有するエンジインアナログを合成し、そのDNA切断特性を検討したところ、グルコサミンを有するアナログよりもガラクトースや2-デオキシグルコースを有するアナログの方が高いDNA切断活性を与えた。さらに、ガラクトースや2-デオキシグルコースを有するアナログはDNAの5'-CGG,5'-CAG,5-CGCの位置のプリン塩基を選択的に切断していることがわかった。新しい塘鎖を導入した新規エンジイン化合物は抗癌活性やバイオターゲッティングの面から、今後の発展に大きな道をひらくものとして期待される。
|