研究概要 |
本研究は、黒質線条体ドーパミン系が線条体ニューロンが保有するどのタイプの受容体を介して、行動の学習に伴う活動特性の変容とその維持に関与しているかを明らかにすることを目的として行った。 実験には2頭の日本ザルを用いた。4〜5連の多連ガラス微小電極を使って、中心の電極によってサルの線条体ニューロンTANsの活動を記録しながら回りの電極でD1クラスまたはD2クラス受容体拮抗薬を電気泳動的に投与した。調べた40個のTANsのうち19個のTANsはD2クラスの拮抗薬(-)-sulpiride(10mM,pH4.5,<50μA)の投与によって選択的に、3個のTANsはD1クラス受容体拮抗薬によって選択的に反応が消失した。また、他の〓個のTANsはD1クラス、D2クラスの受容体拮抗薬のいずれによっても反応が消失することが解った、ドーパミン受容体拮抗薬を投与することによるTANsの自発放電レベルへの有意な影響はみられなかった。また、コントロール実験として生理食塩水を電気泳動的に(<30nA)または圧注入法によって(<1μl)投与したが、TANsの反応に有意な影響は見られないことが確認された。 以上の結果は行動の学習に関与する大脳基底核の神経機序についての次の作業仮説を支持する。すなわち、行動の学習が完成した状態では、黒質線条体ドーパミン系が主としてD2受容体の、一部はD1受容体を介するメカニズムによって線条体のニューロンTANsが行動の学習に伴って獲得した活動を表出することを可能にしていると考えられる。すなわち、学習によって獲得された線条体ニューロンの活動の表出を黒質線条体ドーパミン系が主にドーパミンD2受容体を介して制御していることが強く示唆される。
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