研究概要 |
培養血管内皮細胞に対し流れ負荷装置を用い定量的なずり応力を作用させる実験で以下の点が明らかになった。 1。ずり応力の情報伝達:細胞外にATPの存在する条件で、内皮細胞にずり応力を作用させると、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇反応が起こる。反応パターンはpeak & plateau,oscillation,transientと細胞毎で異なるが、その割合はそれぞれ62%,32%,6%であった。しかし、反応パターンに関わらず、常にCa^<2+>上昇は細胞辺緑の局所から始まりCa^<2+>波として細胞全体に伝搬してゆくことが観察された。また、この反応の開始場所はカベオリンの集中する部位と一致していた。すなわち、ずり応力の情報の入力にカベオラが関与する可能性が示唆された。 2。ずり応力に対する細胞応答:内皮細胞にずり応力が加わると白血球との接着に関わる接着分子の発現が変化した。マウスのリンパ節の細静脈の内皮細胞では本来多量に発現しているVCAM-1が作用するずり応力の強さに依存して減少した。このときVCAM-1のmRNAレベルが低下するが、これはずり応力で遺伝子の転写が抑制された結果であった。さらに、転写の抑制にはVCAM-1遺伝子のプロモーターにある二つの並んだAP1結合エレメントが関わっていた。 これは従来知られていなかった、負のずり応力応答配列の存在を示す新しい知見であった。
|