本年度はグロビン蛋白質におけるモジュール置換のうち、グロビン間におけるモジュールM2の置換、及び一部のアミノ酸残基の欠失との組み合せによる構造、機能特性のファインチューニングを行った。モジュールM2を置換したグロビン蛋白質としては、ヘモグロビンのサブユニットのモジュールM2を置換したαβααとαβαβを発現、精製するのに成功した。αβαα、αβαβともαヘリックス含量が天然サブユニットの20%程度まで低下したことから、その蛋白質構造は大きく不安定化したと考えられた。しかし、これらのモジュール置換グロビンは天然グロビン同様、ヘムを結合することができ、四量体構造を形成した。会合特性については、αβαα、αβαβともβサブユニットとの会合が保持され、モジュールM2、モジュールM4の置換によっても会合特性の変化は観測されなかった。これの結果から、αサブユニットにおけるモジュールM2のβサブユニット型への置換は、グロビン蛋白質の安定性を大きく低下させること、また、グロビンの表面の構造を変化させ、四量体化を誘起するものの、βサブユニットとの選択的な会合特性には影響を与えないことを示している。一方、前年度の結果で得られたミオグロビン-ヘモグロビン間のモジュール置換グロビン蛋白質(αMb)の蛋白質構造の安定化を図るため、グロビン構造における高次構造形成時に立体的障害になると予測されるN末端部分のアミノ酸6残基を欠失させたαMbTを作製したところ、ヘリックス構造の回復が観測され、N末端付近のアミノ酸間の相互作用が蛋白質の高次構造形成に重要であることを実験的に示すことができた。
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