研究概要 |
本研究の目的は,パンやケーキなどのベ-クド製品,スナック菓子などの押出し成型(エクストルージョン)食品などの多孔性食品を対象にして,食品素材の力学特性(粘弾性,付着性など)を工程管理の指標にし,製品の気孔構造(気孔のサイズと方向性)と力学特性(破断応力,破断ひずみなど)を品質管理の指標にして,ファジィ・ニューラルネットワークを応用した管理指標の良否を自動判別するシステムを構築することである。 菓子用薄力小麦粉,デンプン(ウルチトウモロコシ,バレイショ,タピオカ)および生ウルチ米粉(上新粉)を主成分にした生地に秋サケ肉粉末を配合し,食品押出加工用2軸エクストル-ダ(TEX32F,(株)日本製鋼所)を使用して調製した膨化食品の気孔構造と力学特性を評価した。実体顕微鏡(SMZ-U,(株)ニコン)で撮影した試料横断面の白黒写真を用い,画像処理・解析システム(DA-5000R,王子計測機器(株))に原画像を入力し,気孔の2値化図形を抽出して系統的解析を行い,気孔面積率,フェレ径,楕円率,ラフネスを求めた。食パンを試料にして開発した多重2値化イメージング法による画像解析,および市販スナック菓子を対象に開発したウェーブレット変換法による食品テクスチャーの時間周波数解析が本試料についても有効であることを確認した。 パン内相の気孔構造の良否を人為的に変化させるために,異なる生地改良剤を添加して-22℃で4週間貯蔵した冷凍生地から山形型食パンを調製した。気孔構造が非常に良好,良好,不良という3段階の試料について,2次元離散フーリエ変換法により気孔構造のスペクトル解析を行い,パワースペクトルを得た。これに対して16のリングマスク処理により16個の周波数成分(気孔の大きさに相当),16のウェッジマスク処理により16個の方向成分(気孔の配向性)の合計32個の値に数値化し,これを特徴量として画像の識別に用いた。すなわち,32ユニットの入力層,16ユニットの中間層,3ユニットの出力層から構成される3階層型ネットワークに入力し,誤差逆伝搬法で学習させた。ネットワークパラメータの修正方法には,一括修正法,逐次修正法,慣性法などがあり,本研究において学習アルゴリズムの最適化が必要であるが,現段階でも食パン内相の気孔構造について良否を判別することができた。
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