研究課題
基盤研究(B)
本年度は、資料・情報の蒐集を続けるとともに、神話学で重要な図像学研究のため、美術書などから図像データを蓄積した。この図像データは東京大学教養学部教養学科における研究分担者による教育活動(田中純「総合科目・空間芸術論」)においても活用された。各分担者はこれらの資料を共同利用して、初年度の成果をふまえて、ブルーメンベルクの神話論と精神分析の相関関係、およびそこから得られる展望を、下記のテーマについて様々な角度から分析、検討した。(括弧内はテーマの担当者)1.ブルーメンベルクに対する精神分析の影響:ブルーメンベルクのテクスト自体を詳細に検討し、フロイトを中心とする精神分析への直接・間接の言及が認められる箇所を洗いだして、その含意するところを分析し、またそれらの箇所の相互関係にも留意して、ブルーメンベルクにおける精神分析の影響を具体的に跡づけた。(杉橋)2.現代哲学・神学と神話:ドイツ哲学のみならず神学の分野において、神話が現在どのような位置を占める問題となっているかを、終末論などのいくつかのトピックについて分析した。(川中子)3.現代ドイツ文学における神話的なもの:カフカ、トーマス・マンをはじめとする現代ドイツ文学における〈神話的なもの〉の位相を文学作品の分析を通じて析出した。(一條)4.ディスクール分析と神話研究:キットラ-に代表されるディスクール分析によってメディア論や身体論へと拡大された精神分析の展望とブルーメンベルクの神話研究との相関関係を方法論的に検討した。(石光)5.現代芸術と神話のイメージ:美術においてはキーファー、映画においてはジーバーベルクなど、現代ドイツで最も注目すべき芸術家たちの個々の作品を読み解くとともに、芸術における神話の再生というこの動向が現代ドイツ社会で持つ意味を考察した。(高辻・田中)
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