コンドンの引込み実験を舞踊に適用する作業を前年度に続いて行った。舞踊家による実演は観察者が代わるたびに同じことを繰り返すのが難しいので今年はビデオ映像を被験者に見せることを中心とした。映像は舞踊にこだわらず、動きを知覚しやすい対象として相撲、サッカーなどのスポーツ映像を加えた。被験者の身体には各部にマ-キングをほどこし、その動きを見せられているビデオ映像と同時に収録して両者の相関を調べた。コンドンの方法、即ち撮影画像の観察から被験者の動きの特徴を取り出すことが容易ではないことは始めから予測されていたが、実際には予想以上に困難であり、今のところ有意義な成果をあげていない。 これに対し身体の同調現象の研究はほぼ確実に成果をあげつつある。今年は音楽に対する同期を調べるために、まず拍に対する同期反応の違いを析出することを試みた。生体計測器(ゴニオメーター)を用いて裏拍と表拍とに対し同期のパターンに違いがみられるかどうかを調べた。メトロノ-ムの刻むリズムに対し、複数の被験者が裏拍と表拍とを打ち、指につけた計測器の反応をパソコンのディスプレイに映し出してみたところ、表拍と裏拍とでははっきりと反応の波形に違いがみられた。これは拍子音に対しての同調が機械的な反応ではなく、身構えによって異なる志向的行動であることを示してしると考えられる。
|