研究課題/領域番号 |
07451013
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
亀井 若菜 学習院大学, 文学部, 助手 (30276050)
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研究分担者 |
池田 忍 千葉大学, 文学部, 助教授 (90272286)
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キーワード | 絵巻 / 理論 / ジェンダー / フェミニズム / ホモソーシャル理論 / ニュー・アートヒストリーズ / 源氏物語絵 / 土佐光信 |
研究概要 |
本年度は、これまでに収集したデータの整理を行い、また理論的研究の成果をまとめ、それらを応用した研究成果をいくつか発表した。なかでも最大の成果は、私たち3名全員が共同で執筆・発表した「ハ-ヴァード大学美術館所蔵『源氏物語画帖』をめぐる諸問題」である。これは15、16世紀に制作された絵画作品、具体的には『源氏物語』を主題とする絵画作品を分析した論文である。本論文の執筆に際しては、フェミニズム理論、ジェンダー理論、ホモソーシャル理論などがきわめて有効な理論的道具となった。また、記号論や受容理論なども、この論文執筆に際して私たちが用いた理論である。現代のさまざまな理論を用いた作品分析は、日本古代・中世の絵画作品を対象とする場合にも可能であり、のみならず重要であることを、私たちは論証することができた。この論文に基づいて前研究代表者・千野は世界のいくつかの大学で報告を行い、3人の共同研究の成果をひろく公開することに努めた(7月、ドイツのハイデルベルグ大学。9月、イギリスのイ-スト・アングリア大学。10月、米国のカリフォルニア大学ロサンジェルス校。11月、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学、98年3月、米国のコロンビア大学など)。また研究分担者・池田の「ジェンダーの視点から見る王朝物語絵」は、現代のジェンダー理論を平安時代・鎌倉時代の作品分析に応用したもので、絵巻研究史上、画期的論文になった。結論として私たちは、絵巻作品解釈において理論的枠組みの構築は必要不可欠であること、美術理論は、理論家ではない私たちも常に視野に収めておくべき対象であること、また新しい時代の美術史研究には、今後も地球規模での人的交流が必要であること、などを確信した。現代の美術理論を用いた絵巻作品解釈の研究成果は、今後も継続的に発表していく予定である。
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