研究概要 |
平成8年度の研究計画は2つあった。以下それぞれについて研究実績を報告する。 (1)「回避学習成立初期過程の行動分析」 学習は動物個体に行動の変容を迫る。それは、学習の成否を問えば個体差は殆どないほど強力である。しかし、学習過程は個体により大きく異なる。学習成立の過程には個体の生来的な反応傾向や情意的特質などが大きく関与する。我々はこれまでいくつかの研究でこのことを示してきた(堤・牧野,1990;高木・牧野,1991;森・牧野,1994)。これまでの研究から、こうした生得的素因は学習成立の初期に大きく影響することが示唆されていたので、平成8年度はこれを中心に実験的に検討した。分析は未だ不充分であるが、能動的/受動的回避学習の成立初期に個体の情動的差異が大きく関わることがわかった。おそらくは嫌悪学習でなく、報酬性学習においてもこれは真であるように思われる。 (2)「観察法において使用される行動項目の標準化」 標準化は思ったよりも困難で未だ完成をみない。それは実験態度の分類と構造化に対応するように行動項目を分類・整理せねばならないことによる。平成9年度は引き続きこの研究計画を実施しようとする。このとき、同時に行動項目に対応する典型的映像を収集し、行動の静止画像と動画像の分類・整理も試みる予定である。
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