形状の脳内表現とその学習過程の解明

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07451022
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 乾 敏郎 京都大学, 文学研究科, 教授 (30107015)
• キーワード: 形状の脳内表現 / 分散表現 / 主成分分析 / 類似性 / 識別

研究概要

Inui(1996)は脳内における情報統合メカニズムに関して考察を行った。また、Makiokaら(1996)は二次元形状の類似性を説明するニューラルネットワークモデルを提案した。モデルの基本構成は三層のニューラルネットからなり、入出力の恒等写像を実現するものである。このネットワークの内部表現は、刺激セットの主成分表現となっている。三崎と乾(1996)は、図形弁別学習において認識次元がどのように形成されるかを心理実験によって調べた。その結果、形成された認識次元は刺激セットの主成分でほぼ近似できることが明らかにされた。
森崎と乾(1996)は、顔画像を用いて類似性判断と性別判断をどのように関係しているかを調べた。その結果、類似性空間の次元はほぼ主成分次元に対応していた。そし性別判断の判断基準やその確信度は、主成分空間をニューラルネットの入力として性別判断を出力とする三層のニュートラルネットワークで近似することができた。
仁科と乾(1996)は、三次元物体の認知過程を心理実験によって詳細に検討した。刺激として用いられた物体は、複数個の棒からなるスティックパターンと呼ばれるものである。実験では、二つのスティックパターンを提示してその異同を判断させた。その結果、被験者は二種類の異なる処理システムを用いて判断を行っていることが判明した。一つは三次元物体の二次元像を利用してパターンマッチングを行うプロセスであり、もう一つは三次元イメージを回転するメンタルロ-テーション過程である。前者は最近サルの下側頭葉で見つけられたニューロンの特性にきわめて類似したものであった。

研究成果

• [文献書誌] Inui,T.: "Mechanisms of Infoemation integration in the brain." Attention and Performance XVI:Information Integration in Perception and Communication. The MIT Press. (1996)
• [文献書誌] Inui,T.: "How does the brain represent and categorize visual shapes?" Proceedings ofthe International Symposium : Concept Formation,Thinking and their Development.(1996)
• [文献書誌] Makioka,S.: "Internal representation of two-dimensional shape." Preception. 25. 949-966 (1996)
• [文献書誌] 乾 敏郎: "見るメカニズムに挑む" 電気学会誌. 5月号. 259-262 (1996)
• [文献書誌] 乾 敏郎: "知覚と認知の計算理論" 哲学会. (1996)
• [文献書誌] 森崎礼子: "顔の類似性空間との比較による性別判断過程の検討" 日本心理学会第60回発表論文集. 699-699 (1996)
• [文献書誌] 三崎将也: "図形弁別学習における認識次元の形成" 日本心理学会第60回発表論文集. 622-622 (1996)
• [文献書誌] 仁科繁明: "物体認識における基底(GRBF)表現と3次元表現の分離" 日本心理学会第60回発表論文集. 617-617 (1996)
• [文献書誌] 乾 敏郎: "類似性空間の形成過程とその運用メカニズム" 日本心理学会第60回発表論文集. s95-s95 (1996)
• [文献書誌] Nishina,S.: "The contribution of 3-dimensional information during viewpoimt dependent object recognition." Proceedings of the Society for Neuroscience. (1996)
• [文献書誌] Inui,T.: "Attention and performance XVI.Information Integration in Perception and Communication." The MIT Press, (1996)