研究概要 |
本研究の最大の目的は、被験者が感ずる形態の類似度ならびに混同率のデータを統一的に説明する原理を解明することにある。これまで心理学の分野では、文字・幾何学図形・顔などについて多くの類似性に関する研究があるが、それらは現象の記述にとどまっており個々の対象に強く依存した結果になっている。また、牧岡ら(1993,1994)はある種のデータ圧縮をするニューラルネットワークで、被験者の混同行列にきわめて類似の情報表現が得られることを示している。そこで本研究では、被験者が感ずる類似度や混同行列を情報圧縮という観点からどの程度説明が可能なのかを実験的に検討を行った(Inuiら、1996:森崎、乾,1996)。さらに、類似性や混同率が与えられた刺激セットにどのように依存しているのかについても検討を行った。また、これらの結果が情報圧縮や主成分分析という観点からどの程度説明できるかについても検討を行った。また、学習によって類似度や混同率がどのように変化するかという点についても調べた(三崎、乾,1996)。視点依存表現に基づく物体認識の理論では、一つの物体に対していくつかの視点からのviewを記憶することによって任意の視点からの認識が達成されると考えられている。仁科、乾(1996)は人間の物体認識システムが3次元構造情報をどのように利用しているかを検討した。得られた結果はGRBF的な2次元的比較モジュールと3次元的比較モジュールの二つのモジュールが同時並行的に働いていることを示唆した。さらに、試行を繰り返すことによって見いだせる学習の効果は特に3次元的比較プロセスで大きいことを示した。
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