研究概要 |
本研究は、ストレス-コーピング-病気罹患性モデル(Steptoe,1991)(ストレッサーが生体にどのような影響を及ぼし,その効果はどのような心理生物学的ストレス反応の変化を経て,最終的に健康-病気現象に反映されるのかを示す)を理論的枠組みとして,ストレスと健康-病気との間に介在する心理社会生物学的メカニズムを実験的及びフィールド研究から実証的に解明することを目的とする. 今年度は,次の2点について,大学生を対象に検討を加えた. 1.日常生活場面におけるストレス反応の自覚と健康関連行動との関連性に関するフィールド研究(N=546) 2.生活ストレスの体験の有無と心理生物学的ストレス反応性との関連性に関する実験的研究(N=30) その結果,次のような知見が得られた. 1.ストレス反応の自覚と健康関連行動の一つであるダイエット行動との間に有意な関係が認められた.すなわち,ストレス反応を強く自覚している学生ほど,ダイエットを実際に実行しているが,減量することが困難であると認知しており,自分の体型を太っていると自己評価した.ストレス反応の自覚と体脂肪率,最大酸素消費量で測定された体力,唾液免疫グロブリン(lg)A抗体産生量,唾液3-methoxy-4-hydoroxyphenylethylene glycol(MHPG)含量との間には関係がなかった. 2.日常生活場面におけるストレス反応の自覚の程度によって被験者を2群(高ストレス群と低ストレス群)に分類して,実験室場面でメンタルストレス・テスト(line length judgement task)を負荷した時,遂行成績,主観的ストレス状態(覚醒,自己意識,動機づけなど),心臓血管系ストレス反応性,唾液免疫lgA抗体産生量と唾液MHPG含量に群間差を認めた.
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