研究概要 |
本研究は,ストレス-コーピング-病気罹患性モデル(Steptoe,1991)を論理的枠組みとして,ストレスと健康-病気との間に介在する心理社会生物学的メカニズムを実験的及びフィールド研究から実証的に解明することを目的としたものである.今年度は,以下のような所見を得た. 1.日常生活場面におけるストレス反応の自覚の違いによる実験室のメンタルストレス・テストに対する心臓血管系ストレス反応性には有意差を認めなかった. 2.エネルギー覚醒や緊張覚醒などの自覚反応については,生活ストレス体験を多く有する被験者ほどエネルギー覚醒の低下と緊張覚醒の上昇が顕著であった. 3.唾液免疫グロブリン(Ig)A抗体と唾液3-methoxy-4-hydoroxyphenylethylene glycol(MHPG)含量の変化については,メンタルストレス・テストによる有意な増加を認めただけで,生活ストレスの有無と交互作用しなかった. 4.メンタルストレス・テストに対する自己注目の程度は,生活ストレスの自覚がある個人ほど有意に高く,課題に対する注意配分も多かった. 5.健康関連行動の実行と生活ストレスの自覚との間にはとくに系統だった関連性が認められなかった. これらの知見より,生活ストレスが生体の健康-病気結果に及ぼす効果については,いろいろな心理生物学的ストレス反応を介する可能性が明かとなった.
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