本研究の目的は、顔面表情認知の処理過程に関する検討である。そこで、本年度においては、次のようなことを実施した。 1)実験装置の構築:実験用顔画像処理システムの構築 森島がこれまでに開発したソフトウェアに、新たに画像提示の時間・順序の制御、被験者の判断の反応時間の測定などを実行するためのソフトウェアを組み込んだ実験用システムを製作した。 2)顔面表情刺激の作成 次いで、下記の実験に用いる刺激の準備を行った。すなわち、刺激に使用する複数の人物の平常時の顔画像を新たに作成し、それらの顔画像の表情制御に必要な人物ごとのワイヤーフレームモデルとテキスチャデータを作成した。さらに、各刺激人物の顔画像の表情を、山田が見いだした表情情報を変数として合成した。 3)顔面表情刺激のSD法評定実験 次に上記の刺激をSD法で評定させる集団実験を行った。すなわち、本実験用顔画像処理システムを用いて表情情報を組織的に変化させたときの刺激人物の顔画像の表情を刺激として、これまでに山田が使用してきたSD法に従いそれらを評定させる実験を実施した。さらに、その反応の因子分析を行い、これまでの実験結果と同様の感情的意味次元が抽出されるかどうかを検討した。この結果、山田が線画刺激を用いたSD法評定実験から導きだした「快-不快」および「活動性」という伝統的な感情的意味次元の存在が改めて確認された。 このように、本研究は、当初の予定どおり順調に進んでいる。新年度の成果によって、極めて学術的に重要な知見が得られるものと考えられる。
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