本研究は、在日及び帰国留学生を対象とする大規模な質問紙調査を核としており、まず少数の留学生や彼らと日常的に接している日本人関係者の聞き取り調査を通じて本調査に導入すべき質問内容を検討して調査票を設計し、在日留学生については100以上に及ぶ大学や留学生宿舎などを通じて総計1万6千ほどの調査表を発送、帰国留学生に関しては1975年と1985年の2時点の滞日経験者に対象を限定して5200名ほどの対象者に調査票を発送し、前者に関しては4891名、後者に関しては1411名からの有効回答を得た。私たちは1975年、1985年にも同様の留学生調査を実施しており、それらの結果と比較して在日留学生数が急増した20年間における日本社会の国際化の様相を検討したところ、対日イメージや滞日経験に対する評価が以前よりも全体に悪化する傾向が認められ、奨学金や保証人制度の改革など留学生への制度的対応には改善の跡がみられるし、留学生の日本語能力も全体に向上したとしても、日本社会の閉鎖性や日本人との人間関係に悩みをもつ留学生は依然として多く、自分たちと異質な思考様式やそれを体現する者への拒否反応、人間関係の在り方に関する価値観の違いなど制度的に対応することが困難な日本人のメンタリテイーに関わることがらが以前と同様に留学生にとって最大の障壁となっていることが判明した。さらに日本留学を終えて帰国した人たちの回答を含めて留学生の文化的背景や人工学的属性、日本語能力、滞日期間、日本での教育内容、生活状況などによる対日感情や対日イメージの変動、母国への感情や意識、アイデンティティの在り方などの多角的に分析し、より長期的な視点から現行の留学制度を改善するための指針や今後の異文化間の相互理解を深めるうえでの方策を検討している。
|