研究課題
基盤研究(B)
本研究では、青年期・成人期以降に顕在化する重度知的障害をもつ人の粗暴化及び無力化の問題について、特に学校卒業後の生活環境との関係において明らかにし、それらの問題を改善し彼らの社会参加を促進していくためのアプローチを心理学及び医学的な側面から総合的に開発することを目的としている。上記の目的を達成するために、本研究は大きく2つ内容から構成されている。1つは、学校卒業後の粗暴化・無力化の問題を総合的に改善していくために、それらの問題がどのような理由で生起し、なぜ維持されているのかを究明していくための実態調査であり、もう1つが実際にこれらの臨床症状を有する人へのアプローチである。平成8年度は、平成7年度に引き続き粗暴化・無力化の原因を明らかにするための実態調査を進めてきた。本年度は、昨年度の聞き取り調査をもとに調査用紙の作成とその配布を行った。調査用紙は、学校卒業後の生活状況や地域社会への参加状況などを把握することによって臨床的な改善に直接的に結びつけられるような独自の視点から調査項目が作成された。現在、調査用紙の配布作業を進めており本年度中には回収し分析作業を開始する予定である。一方、粗暴化・無力化の実態は、障害乳幼児への調査と比べ症例の把握が困難であるとともに、彼らの生活歴及び生活状況が大きく異なっているため、広範囲なところから情報を収集する必要がある。そこで、国内及び国外にも広くネットワーク化が進められているインターネットを用いて資料収集することを計画した。現在、ホームページの開設準備を行っており、これによって情報の収集だけでなく治療のためのネットワーク化が可能になると思われる。これまでの研究にはないオリジナルな試みとしてその成果が期待される。今後の予定としては、調査用紙をもとに粗暴化・無力化の実態の分析作業を進めるとともにインターネットでの情報収集を行う。そして、平成9年度には、調査やインターネットでの情報から検討された内容をもとに、臨床事例への適用から総合的なアプローチを開発するための作業を進めていく。