研究課題
基盤研究(B)
平性9年度は、研究助成最終年度として「学校教育を終了した知的障害を持つ人の生活実態に関する調査」の集計及び分析を行った。本調査は、愛知県心身障害者コロニー中央病院精神科外来において、近年、その主訴として急激に増加している青年期・成人期の知的障害を持つ人々の粗暴化・無力化といった重篤な問題行動の生起の実態と生活上の困難の実態について把握し、それらの結果をもとに学校教育が終了した後の彼らへの支援や援助の方法について検討することを目的とした。調査は、愛知県内の各市町村の「手をつなぐ親の会」に所属している会員を対象に実施した。各地区の会員から、すでに学校教育を終了した子女を持つ親を無作為で抽出し、各地区の勝員の約1割に相当する318名に調査協力を依頼した。そのうち291名から回答があり、回収率は約91.5%と高率であった。調査結果のうち本研究の主たる目的とした問題行動の発生状況についてみると、現在何らかの問題行動を有しているとの回答が約半数に上る137名(47%)からあった。問題行動の具体的な行動特徴としては、「暴力」「怒りっぽい」「自傷」「情緒不安定」がそれぞれ30県以上報告され、続いて、「荒々しい態度」「物を傷つける」「こだわり」「パニック」が各20件以上報告された。その他に、「通所拒否」「独り言」「無気力」「動きが少ない」などが見られていた。それらの行動の発生時期をみると、幼児期及び小学生では少なく、中学生で多くなり、学校卒業後最も多くなるといった傾向が見い出された。また、投薬の開始時期をみると、誕生直後から1歳までが多く加齢とともに減少傾向となるものの、思春期すなわち14歳から15歳に再び頂点を迎えていることがわかった。以上の結果から、学校教育終了後に知的障害のもつ人々の粗暴化・無力化が深刻な問題として発生していることが明らかとなり、それらに対して早急な対応を行う必要があることが示唆された。今後、調査結果に対して詳細な分析を行い、それらの問題への対処のためのニーズの把握と具体的な対処方法について提案する予定である。