アメリカ合衆国における大学開放は、19世紀以来、一般開放事業(General Extension)と農業改良普及事業(Cooperative Extension)を車の両輪として発展してきた。とりわけ、アメリカの大学は、「農業改良普及事業」をつうじて、農業をはじめとする地域産業の振興に積極的にかかわり、大きな成果をあげたという点で、地域社会の信頼と信用を獲得し、地域社会における地位を不動のものとした。 わが国において、戦後、アメリカをモデルに、新しい大学制度を計画しようとするさい、このアメリカ型大学開放の形態を導入しようという動きがあったが、とくに、大学の影響下で「農業改良普及事業」をすすようとする構想に対し、当時の農林省サイドが激しく抵抗し、頓挫したという経緯がある。(結局、わが国において、農業改良普及事業は、農林省の管轄のもと、地方自治体の手によってすすめられることになる) しかし、現在、わが国の多くの大学は、生涯学習社会へむけた新しい大学開放活動の方向を模索するなかで、大学の「地域産業の振興」にはたす役割に注目するようになってきている。ここにきて、アメリカにおいて大学開放の原点であった「農業改良普及事業」が、わが国において、戦後どのようにうけいれられ、また改編されていったか、この経過を詳細に把握し、その実態を整理しておくことが、わが国における大学開放を考えるうえで欠かすことのできない作業となっている。本研究においては、このような立場から、資料の蒐集にあたる一方、そのための基礎的データベースの作成をもう一つの柱としてきた。とくに、システム開発にあたっては、従来のUNIXベースのものから、インターネット流通が可能な電子出版とデータベースの融合というかたちでとりくみ、現在、若干の調整が必要なものの、基本システムについては実験的稼働までにはこぎつけている。
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