第一部での新しい知見としては、ワーカーズ・コレクティブを新しい視点から位置づけ直す可能性が得られた。生活クラブ生協から発生したワーカーズ・コレクティブの担い手が、社会階層としては比較的高所得な社会階層である場合が多く、そのために、理念としては高いものがあっても、社会的経済的な基盤を十分に持ち得ないという危険性を抱えている。そこで、たんに日本全体の市場競争に従属するのではなく、地域にとっての有益な仕事づくりの試みとしての位置づけのなかから採算を考えることが重要だということになる。また、その意味で言えば、理念と採算性とのきびしい緊張関係そのものが、むしろ新しい運動の試みとして積極的にとらえられるべきだと考えられる。 第二部においては、中高年者が積極的な生き方を模索している新たな状況が明らかになった。これまでの地域の血縁地縁関係に依存せず、いわば新しい連帯の基盤として、「高齢者協同組合」の結成にいたったことはきわめて注目に値する。と同時に、生きがい支え合いの新しい組織としての可能性は大きいものの、働き続けるための企業体としてどういう可能性があるかについて言えば、高齢者だけの組織形態では多くの限界があることも見えてきた。つまり、新たな職種を作り出すという点では、働き方の実現の場所としては職種が限定され、むしろ、農業などの方が積極的な展開を見込めるといえよう。つまり、利潤性から言えば、周辺に追いやられそうな職種の方が、かえって、高齢者の新しい生き方と働き方に可能性を提供するかも知れないということが推察された。
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