米国商務省統計局は10年ごとにセンサスを実施している。本研究は、1990年版のU. S. Censusを用いて、米国のエスニックな現状を分析した。 本研究では、全国データによる分析に加えて、ニューヨーク、イリノイ、テキサス、カリフォルニアという北東部、中西部、南部、西部の4地域で最大の人口を有する州間の比較分析を行なった。 取り上げたエスニック・グループは、アフリカ系(黒人)、東アジア系(中国系、日系、コリア系、フィリピン系、ヴェトナム系)、ヒスパニック(メキシコ系、プエルトリコ系)であり、これにマジョリティである白人を加え比較の基準とした。 分析結果から、各エスニック・グループはそれぞれ異なる社会的状況に置かれていることが明らかになった。同化+排除(アノミー)にあるアフリカ系、異化+排除(アンダーカースト)にあるヒスパニック、中間マイノリティともいうべきアジア系の姿がセンサスの分析を通して計量的に実証できた。 本研究によって、模範的マイノリティともいわれる日系や中国系は、はたしてほんとうに統合かつ同化のメルティングポットに到達しているのか、アフリカ系アメリカ人の現状については、こうした分析枠組を通して何がいえるのか、相対的にニューカマ-であるメキシコ系の現状はどうなのか、またそれらは地域ごと、州ごとに顕著に異なることはないかといった問いへの回答が得られたと思う。 その際、センサスのイデオロギー性、政治性、エスノポリティックスや、政府の社会制作との関連を歴史的に追うことによって、センサスとセンサス・データの意味をより深く分析することができるということも確認できた。
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