今日の米国における人種間、民族間の不平等構造を計画的に分析することが本研究の主題であった。 不平等を測定するための計量的指標として、所得、職業、教育達成という三指標を用いた。 本研究は1990年の国勢調査(US.Census)を基に商務省統計局によって作成されたPublic-Use Microdata Samplesである。PUMSは世帯とその成員に関する情報(世帯や個人が特定されるような情報は除く)を記録した電子データである。PUMSは世帯とその成員に関する情報(世帯や個人が特定されるような情報は除く)を記録した電子データである。PUMSにはアメリカ合衆国の全人口と世帯の5%をランダム抽出した「5%サンプル」と「1%サンプル」があるが、今回は、5%サンプルを用いた。 なお、本研究では、全国データの他に、カリフォルニア州、ニューヨーク州、テキサス州イリノイ州の各データも加え地域差にも注意を向けた。アジア系の内部構造を分析するうえでカリフォルニア州データは有用だった。 分析結果として以下のことが確認された。 1 人種民族により顕著な所得格差、職業格差がある。 2 教育達成により、顕著な所得格差、職業格差がみられた。 3 性別により顕著な所得格差、職業格差がみられる。 4 職業分類ごとに顕著な所得格差がみられる。 5 アジア系は平均所得で白人を上回っており、所得においてはもはやマイノリティとはいえない。 6 ヒスパニックは顕著に低学歴者の割合が高く、アジア系は高学歴者の割合が高い。 7 低学歴者間では白人とその間に所得格差がある。高学歴者間では、白人およびアジア系と黒人、ヒスパニックの間に顕著な所得格差がある。 8 低学歴者間では、アジア系と黒人、ヒスパニックの所得格差はまったくないが、高学歴になるに連れて顕著な格差が生じている。 9 アジア系の内部には顕著な所得格差、職業格差、教育達成格差がある。 10 中国系は教育達成において、大学院以上と高校卒業未満の割合が他の人種民族グループに比して高いという独特の傾向を示している。集団内部の階層化が進んでいることを示唆するデータとも考えられる。
|